茶運び人形 研究塾 へ 「ようこそ」
茶運び人形研究塾へようこそ!  「機功図彙」の中でも高い評価を得ている「茶運び人形」を研究しよう。すでに多くの先輩方が研究されており、資料も多い。これらの方々に感謝しながら研究をすすめる。
「機功図彙」の研究  例によって「機功図彙」から研究しよう。「茶運び人形」は、多くの人が知っている有名な人形だが、この人形の作り方が「機功図彙」に載っているのはうれしい。
 右の欄は、茶運び人形の動作が書いてある。
 人形の持ちて居る茶台の上に茶碗をおけば人形向こうへ行く 茶碗を取れば行き止まる また茶碗をおけばあとへ見返りて元のところへもどる・・・。

 左の欄は、本体の左前から見た、この「からくり」の鳥瞰図である。左、右とか前、後は、人形を基準に説明している。
 土台は、3輪車のようになっていて、先頭の車輪を動かして進む方向を変える。先頭車輪のすぐ右後に見えるのはレバーで、これが押された時に車輪の向きを変える。レバーは、すぐ上にある円盤(1の輪)に取付けられた、ひょうたん型のカムの回転により押される。カムの角度調整で、人形の回転場所が決まる。

 後側の車輪は「2の輪」と呼ばれ、左側の車輪には歯が切ってあり、ギヤーになっている。直ぐ上にある行司輪という調速機構(テンプ)につながっていて、車輪の回転をコントロールする。右側の車輪は普通の円盤である。

 土台の上、中央に大きな円盤がある。手前が「1の輪」と呼ばれる駆動輪で、歯が切ってある。その奥に見えるのはゼンマイである。「1の輪」は鯨のひげによるゼンマイの戻る力で回転し、車輪(2の輪)軸の中間にある小さなギヤー(ここでは見えない)に伝えられ車輪を回転させる。

 「2の輪」の外側に見える黒い棒は足を動かすための棒である。中心をずらし、左右の取付けを対象にして、車輪の回転につれて、丁度、歩いているような動きをさせる。

 本体の上のほうに見える軸は、左右の手を連動させるためのもので、両端にそれぞれ手を取付ける。茶碗を上げた時、先の行司輪にストッパーが落ちるようにして、走行を止める。最上階の台には頭を取付ける。頭は、足の動きと連動して首を振るようにする。これは、本体右側からの図に載っているが、本図とあまり変わらず糸のガイドと糸が目新しい程度なので省略する。
 
 右側の図は、本体を後からみた図である。
 左の方を見ると、車輪(2の輪)と速度調整のための行司輪との関係が良くわかる。また、上で見えなかった車輪軸中央に小さなギヤー(2輪の心車)があり、上の駆動輪(1の輪)と噛み合っているのがわかる。

 「1の輪」の右の方に中間の柱(板)があり、その右側に「ぜんまい」がある。「ぜんまい」の端面は曲げ、解けた時に車軸に当たらないよう釘などのストッパーをつけるなど、対策を指示している。「ぜんまい」は、外側を固定、内側を軸に巻きつける方式である。

 「1の輪」の右横(「ぜんまい」側)に「留輪」がある。これは、ラチェットになっていて、「ぜんまい」が解ける時のみ「1の輪」が回転し、「ぜんまい」を巻く時には「ぜんまい」だけが巻かれるという「匠の技」になっている。同様の技は、「1の輪」の左側にもある。前輪を操作するひょうたん型のカムにもラチェットがしこんであり、「ぜんまい」だけが巻かれる仕組みである。

 左側の図は、「1の輪」の上あたりから見た図(矢視図)である。
 ここでは、前輪(「魁(さきがけ)車」)を操作する位置関係がよくわかる。そのからくりについては、別に解説してある。
 土台の長さは5寸5分とあり、165mmである。また、横方向は、4寸3分で、130mmになる。
 
 右側は、手の構造及び人形との動きを連動させる仕組みについて説明している。
 研究者になったつもりで文章を読んでみよう。(仮名遣いは自分流のところあり)

 是は人形の行くを止むる仕組なり

 ()手に持ちたる茶碗をとれば軽くなり 手先あがるゆえ 此所下がりて行司輪に当たるゆえ 行とまるなり

 ()是にて引くゆえ 手さきつねにあがるなり

 ()此所へ茶碗をおけば手先きさがるゆえ()の所あがり行司輪へかかりたる所はづれて 車はづれて車めぐるゆえ 人形向こうへ行くなり

 左側は、首を動かす仕組みについて説明している。

 此糸を下へひくゆえ首を動かしゆくなり
 なお惣図と見合わせてめうなり

 「めうなり」は、明らかなり、と解釈すればいいか・・・。
 左の柱を内より見たる図、である

 ()前図のごとく是にて車をとむる 手をうへよりおせばくるまめぐる 図にて明らかなり・・・
 ()は、行司輪の回転をフリーにしたり、止めたりする役目を持つストッパである。上部の手を取付ける軸から下がっている。ストッパは手と反対方向についており、手が上がる(茶碗を持ち上げる)と下がる(行司輪が止まる)という動作をする。(前図を参照のこと。)

 右の柱及中柱については、特に変わった仕組みもないから略す、とある。

 「1の輪」、「2の輪」の心柱(心棒)は3つの柱(板)へ皆通るなり 但し「2の輪」の心棒のあたる所の中柱は切りかきてよし、と書いてある。

 これは通常の機械設計の時にも注意するところである。3点支持は、動きを悪くするので特に目的がない時はゆるくしておくか、取付けないのがかしこいやり方である。
 「1の輪」の方は、「ぜんまい」を取り付けており、軸に「いびつ」な力がかかるので、それをガイドさせる役目を持っているので言及していないのだろう。同感である。
 人形後へ戻る仕組み

 魁車は船の舵の如し この車縦に直におれば、人形直に向こうへ行くなり。もしこの車左へ斜めなれば左へ斜めに行す。

 今1の輪めぐりて()を推す故に自然と()管にてつかれて魁車右へ斜めになる その間は斜行して おわりに後ろへ巡りてかへる時 ()のところはづれる時は あとへ直ちに行するなり そのはづれて直ちに直行するものは()の方へ常に引いておるゆえなり

 「1の輪」のひょうたん型のカムがまわって、レバーを押すと前輪が右方向へ向きを変える。その間、車は右へ回転を続ける。後へ帰る時分に、カムがレバーから外れ、直進する。これは鯨のひれによるスプリングで何時もレバーを()の方へ引いているからだ・・・。

 スプリングとレバーは糸でつながれていて、レバーに取り付けてある押し棒は管になっている。管の中を糸が通っているように解釈すればいいかな・・・。

 下の欄左の方に、分図があり寸法などは左のごとし、と書いてあり、次ページに部品図が掲載されている。
 
 上の図と見較べると部品の構成がわかる。

 参考までに、
   右側3段目は、いと 鯨のひれにて作る 糸をなす 鋲を打 鋲
      4段目は、一寸ばかり
   左側3段目は、管(すが) 一寸一分            
 である。

 こうして読んでいくと、作ってみたい、やれそう・・・と思ってきませんか?

 「ぜんまい」を巻く時、「ぜんまい」が緩む時、一の輪はどのような動きになっているのだろうか。ここでは、その「からくり」について研究する。

 一の輪右より正面に見たる図

 留輪 一の輪の左にあり 一の輪の心棒のはしへ「かぎ」をさし ()より()にむかってめぐらせば自由にめぐる 又()より()に向ってめぐらすれば ()にて留りてめぐることあたわず 其次第図にて明らかなり 故にこれを留輪と名づく 如此めぐらすれば 「ぜんまい」其手前に在りてしまるなり そのしまりたる「ぜんまい」戻(かえ)るにしたがって 一の輪 留輪とともに 乾より坤に向ってめぐるなり

 留輪は、一の輪の左にある、図にも「一の輪」後、と書いてあるが、一の輪の右側にある右留輪の説明と解釈してよいだろう。手前にぜんまいがあることからも、右と解釈できる。

 留輪は、ラチェットの役目を持っており、心棒を右(時計方向)に捩って「ぜんまい」を巻く時は、一の輪は、まわらない。「ぜんまい」が緩んで、心棒が反時計方向に回転する時は、()で爪が引っかかって、一の輪も反時計方向にまわる。一の輪が回転すると車軸は時計方向にまわり、前方へ進むことになる。
 1の輪の寸法とひょうたん型のカムについて説明している。

 一の輪左より正面に見たる図  まず、上の図から研究する。

 一の輪は、指渡(さしわたし)四寸 歯先よりはさきまで
        歯牧(はのかづ)五十六 或 六十にしてもよし

 ひょうたん型のカムは、行戻(ぎょうじ、ぎょうれつ)と呼ばれる。(以後、行戻という)
 行戻のカムあたり面のところ(上部)には、「初此一の輪と共に此所を周って 前図の()を推し 魁車斜行なり」と書かれ、一の輪と共に回転して、魁車のレバーを押す役目を持っていることがわかる。

 行戻のカムあたり面、最後のところには、「後此所行過て ()をはなるゝなり」、と書いてあり、ここで魁車が戻って直進することになる。

 下の図は、行戻にも留輪(左の留輪)機構、ラチェットがあり、「ぜんまい」を巻く時はフリーに、戻る時は、回転する(一の輪も同じように回転する)仕掛けになっている。
 一の輪の心棒の図 である。上の段、右の方から、各部品の取付ける位置が書いてある。

 鍵をさす所、右の柱の居り所、ぜんまいをさす孔、中の柱の居り所、右の留輪居り所、一の輪の居り所、一▲の輪のさし留釘、左の留輪すはり所、行戻り居り所、行戻りさし留釘、左の柱へさす  ▲留輪の内へさすなり

 心棒の上には、 ぜんまいさしとめ釘穴
            右の留輪さし留の釘 両端如此切べし この釘留輪の内へこめて 其こもる所 此切たるやうにほりぬくべし 、と書いてある。さし留釘は、キーの役目をしている。

 下の段には、心棒の組立て方が書いてある。
 此心棒へ諸輪をさす次第は まづ右留輪さし留の釘をさし 次に右留輪をさし 其次一の輪つぎ其さし留くぎ 次左留輪 次行戻 次其さし留釘 如此さすべし 其後二本の柱へさしこみ 柱はみな外の諸輪をさしてのち 基(だい)板へさすなり ぜんまいはことごとく出来て後さしこみ まくべし

 左の上の留輪の右側には、 右留輪右より見たる所 其さし留釘の入所 如此長くあけぬく 
 下の図の右側には、 右留輪左より見たる所 其さしとめくぎのいる所 如此みしかくほりぬくべし(短く彫り抜くべし) 、と書いてある。留輪が右の方へ抜けないように考えているのか・・・。

 左の方には、 左留輪は左右共に同じやふに切りぬくべし 故に再び図せず

 さし留釘は、キーの役目をしており、各部品が抜けないように、全体では留打という釘がある(全体図参照)。
 
 右の方は、 行戻の図、である。上から
  左より見る所なり  此図のうらにとめわあり 弾あり下の図のごとし

  同右より見る所 左の留輪此所に重る弾なり 鯨のひれにて作る

  此ぜんまいをねじる時如此とめられて 右へ周ること能はす ただとめわ心棒と共に周るのみなり

 一番下には、
  此物ぜんまいをねじて後 其ぜんまいによって諸輪自然に周る 是べつの輪と共に廻て(い)を左へおす故 魁車斜になること已(すで)に前に詳なり 是留輪と其はじきと有故なり

 上の段、左側は、 畳すりの車二輪取合図  である。
 図には、たたみすりの車さしわたし三寸 厚一分斗 右柱へさす 左柱へさす
      此歯かづ八つ 心棒 二の輪さし渡し二寸(三寸の間違いか・・・?) 厚一分ばかり 歯かづ五十六 その下には、畳すり車、添車、中柱、左柱にさす、添車 二の輪、の正面図がある。

 その下には、行司輪さし渡し一寸五分 歯十三 小ギヤーは、歯八つ、とある。
 その左には、ギヤーの歯の作り方として、釘を打って作っても良い、と書いてある。
 右の欄は、添車の意味や取付け要領を説明している。

 此左右の添車と云ものには用なし 只柱と車の間をすかす為のみなり 細工の時取組の次第は 先心棒を柱へさし 次に両そへ車に阿膠(にかは)を付さし込 畳ずり及二の輪ににかはを付さし込 行司輪も是に同し

 歯車は、6つに分解してつなげている。これは、木の強い部分を使って歯を加工することを考えていると思われ、設計技術が優れていたことを伺わせる。

 歯車の下の欄は、使用材料や構成について述べている。
 諸輪皆樫の木を以 如此木口を歯さきへ向くやうに仕組 裏板へにかはにて付てよし 裏板は檜にてよし 此車後より正面に見たる所左のことし
 
 一の輪二の輪共に皆此向にてよし

 ぜんまいは鯨のひれにて造るべし 長四尺はば五分厚六七りん位にてよし 
 細工終りて後檜を曲げるにてもして帯をし 又装束の車へさわらぬやうに仕組をして後 衣装をきせ帯をすべし

 以上が「機功図彙」に載っている「茶運人形」の解説である。ここまで読まれた方に敬意を表すると共に、改めて参考にさせて戴いた、研究者の方々(こちら)に感謝を申し上げます。
 これで終りではなく、出発点であることを確認し、構想を練ろう (お正月だから「寝ろう」になるかな・・・)。
 
2.トップへ戻る
3.Q&Aのコーナーへ
4.塾長の独り言欄へ
5.「連理返り」研究塾 知識編へ
6.「五段返り」研究塾 知識編へ
7.塾長の独り言データベースへ

                        Copyright(c) 2004 okazakit, all rights reserved